第39章 上弦ノ月陰る時
悲(鬼とは人間の形が変貌したもの。鬼に出来ることは人間にも出来る。呼吸は人間を文字通り鬼の如く強くする。この見えぬ目は本質を見抜く目。決して惑わされない。極限まで刮目しろ!!)
──ドクンドクンドクン
今までになく、自分の鼓動の音が大きく聞こえる。
ギリギリのところで黒死牟の攻撃を躱しながら、それでも黒死牟から意識を離すことなく、深く深く気配を探る。
すると──…
──ドクン
盲目であるにも関わらず、黒死牟の筋肉、骨、血管といった体の細部が視えるようになった。
今までにない出来事に悲鳴嶼は目を見開く。
悲(何だこれは!?脈動が知覚出来る。はっきりと像を結んだ…。これは…もしやこれが!!)
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悲鳴嶼が透き通る世界を知覚出来るようになっていた頃…
時透もまた自分の立ち回りを考えながら奮闘していた。
時透(内側に…間合いの内側に入れ。一瞬でもいい、ほんの一瞬でも上弦の壱の動きを止められたらほんの少しでも攻撃の手を緩めることが出来たなら…。悲鳴嶼さん、不死川さんのどちらかが 奴の頸を斬ってくれる…必ず!!片腕も失って全力で刀を振ることができないし、さらに傷が増えて新しい出血が続いて動きが鈍くなり始めている。まだ動ける内に役に立つ内に……急げ!!)
時透は黒死牟へと走り出す。