第39章 上弦ノ月陰る時
ー 月の呼吸 拾陸ノ型 月虹・片割れ月 ー
──ズザッ
幾度も放たれる見たことのない技。
これには悲鳴嶼もなんとか躱しながら、眉をひそめる。
悲(技が尽きない。一体いくつ型を持っているんだ。)
それと同時に、悲鳴嶼の中で膨らむ違和感と疑問。
悲(……おかしい。速すぎる。攻撃ができない。全て読まれている。しかしそれが速すぎる。)
いくら黒死牟が本気になったからとはいえ、まるで自分の脳内を直に覗かれてるのかと疑うほどの速すぎる対応。
悲(下手をすると攻撃動作に入る前から動きを抑え込まれる。技を出そうと考えた瞬間を読まれている。おかしい。)
先刻までは、悲鳴嶼も不死川も確かに黒死牟と渡り合えていた。
それなのに七支刀に変わった途端に手も足も出なくなってしまった。
悲(神通力でも使っているのか??この鬼には何が見えている??"何を見ている”??)
その違和感に気づいた悲鳴嶼は意識を深く集中させるために己に言い聞かせる。
悲(感覚を研ぎ澄ませ。違和感の正体を掴め。)
戦いながら感覚を研ぎ澄ませ、思考を続けるのはかなりの難題。