第6章 蝶屋敷
容認はしたが、あのときお館様に伝えたとおり禰豆子がお館様へ危害を加えるようなことがあれば容赦なく頸を切り落とすだろう。
しかし、
杏(まぁ、妹の方はあまり心配してないのよね。
お館様にも私にも敵意は感じなかったし。)
禰豆子のことは別に嫌いなわけではないようだ。
杏(どちらかといえば、問題は兄の方。……。)
杏が嫌いなのは炭治郎の方だった。
思うところがあり、はぁ、とため息をつく杏。
『…、着いた。』
考え事をしながら歩いていくとすぐなようだ。
──ガラッ
『ごめんくださーい!!』
戸を開け、大きな声で屋敷の中に呼びかける。
蝶屋敷は鬼殺隊における治療所のようなところだ。
そのため、重症を負った隊士が入院するすることもありとても広い屋敷になっている。
おそらく、柱の屋敷の中で最も広い。
『…返事がないですね。』
杏(さて、どうしましょうか。
彼の怪我の具合から見るに、しのぶさんの治療なら大体の傷は治った頃かしら…。…なら、)
『お邪魔します。』
少し考え込んだ後、草履を脱ぎ屋敷の中へあがる。
返事がないのは日常茶飯事であり、柱の面々は人の気配がすればあがっても良いことになっていた。