第6章 蝶屋敷
ピチチッ
鳥の鳴く声で目が覚める。
いつも通り、櫛で髪を梳かしサッと髪を結う。
鍵のかかった部屋への挨拶、朝餉、屋敷の掃除に花へのみずやり。
すべてを終えた杏は隊服に身を包む。
『行ってきます。』
小さく呟き、蝶屋敷へ向かう。
蝶屋敷は杏の住まう花屋敷から少し離れた場所にあり、歩きならば1刻はかかってしまう。
柱である杏は急げばすぐ着くことができるが、今日はあえて歩いていくことを選んだ。
歩きながら頭の中を整理する。
杏(竈門炭治郎に竈門禰豆子…。
柱合裁判のときは名前ちゃんと聞けてなかったのよね。隠に聞いておいて良かったわ。)
あのときの杏は炭治郎にまったくと言っていいほど興味がなかった。
鬼である禰豆子には多少の関心はあったが、炭治郎はどうでもよかった。
しかし、最後の最後。
炭治郎がお館様のお言葉を遮った瞬間、杏による炭治郎の評価は0から−50くらいにまで下がった。
杏(正直、あのとき無一郎くんが石投げてなかったら私が思いきり蹴り飛ばしてたわね…。)
そのときのことを思い出し、少し眉間にしわを寄せる。
これから杏が蝶屋敷へ向かうのは彼らの様子を見るためだ。