第38章 柱の矜持
『玄弥くん、大丈夫?』
玄弥は時透が取ってきてくれた上弦の壱の髪を喰べ、杏と時透により身体を押し付けられていた。
時「玄弥??しっかりしろ。頑張れ玄弥。」
玄「ハァ、ハァ、ハァ」
杏と時透の掛ける声を遠くに感じながらも、玄弥の脳内には 別の声が聞こえてきていた。
「────」
玄(…声?誰だ…何の…)
その声を聞きながらも玄弥は体の変化を直ぐに感じていた。
玄(胴体繋がった…凄まじい回復速度。髪の毛喰っただけで これか…。これが上弦の壱の血の濃さ…。血の巡る速度が上がる。気分がいい…。)
今までで感じたことのない力の湧く感覚に顔を綻ばせる玄弥。
更に玄弥は、自分の先に転がる上弦の壱の折れた刃先を見つめた。
玄(もう1つある。あの上弦の壱の折れた刀の刃先。あれを喰えば、もっと…。)
そしたら、師である悲鳴嶼とも兄である不死川とも肩を並べて戦える。
そんな気さえ起こる中。
再び玄弥の脳内に、声が聞こえてきた。
『────』
玄(ぐっ…また声が…。)
『────』
玄(頭の芯に響く…。)
最初はぼそぼそと聞こえるだけだった声が、次第にハッキリと玄弥の脳内に響いてきた。