第38章 柱の矜持
『無一郎くん!!』
大好きな声が聞こえ、そちらを振り向く。
時「杏さん…!!」
『無一郎くん!!大丈夫ですか!?』
杏の姿にほっ、と安堵する。
時「上弦ノ壱に磔にされてしまって…。」
『大変…すぐに降ろしましょう。刀は一気に引き抜きますから止血してください。』
時「はい…。」
杏に言われた通り、出血している血管を呼吸で止血する。
時「大丈夫です。お願いします…。」
そう言い左腕に巻いていた布をぐっ、と噛み締める。
『それではいちにの、さんでいきますよ。』
時透が磔にされている位置が高く、届かないため杏は助走のために少し下がる。
『いきます。』
その言葉と共に走り出す。
飛び上がり、柱に足をつけ、刀を両手で握る。
『いち、にの、さんっ!!』
時「っっっ!!」
時透は歯を食いしばり、激痛に耐える。
──ドサッ
支えを無くした時透の身体を杏が抱き止める。
時「ハーーッ、ハーーッ」
杏の腕の中で蹲る時透の額には激痛で冷や汗が滴り落ちる。
『大丈夫ですか??』
杏は手拭いでその額を拭う。
時「だい…じょうぶです…。」