第37章 祈り
悲「宇髄がいなければ不死川に飛びかかっていただろう。お前の気持ちもわかるが、ここが産屋敷邸であることを忘れるな。」
『…はい。すみません。』
しゅん、と小さくなる杏。
カ「まぁまぁ。杏ちゃんはお館様大好きだものね。仕方ないわよ。」
ふふふ、と微笑みながら優しく頭を撫でてくれるカナエに杏は徐々に笑顔を取り戻す。
そんな杏を見てさらにふふっ、と微笑んだカナエは不死川へも笑顔を向ける。
カ「改めて…花柱の胡蝶カナエです。不死川くん、これからよろしくね。」
悲「南無…。岩柱の悲鳴嶼行冥だ。共に頑張ろう。」
宇「俺様は音柱の宇髄天元だ。お前に柱としての実力があるのかは知らねぇが、まぁとりあえずよろしくな。」
冨「……水柱の冨岡義勇だ。……よろしく。」
不「…よろしく、頼みます。」
柱たちの歓迎に不死川は先ほどまでの謝罪も込めて軽く頭を下げる。
『よろしくお願いいたします。不死川さん。』
小さく聞こえてきた声に不死川はゆっくり頭を上げる。
すると、先ほどまでカナエの後ろに隠れていた杏が目の前まで来ていた。
不「…あぁ。よろしくな。」
そう答えながら杏をじっ、と見つめる不死川。
不「音白…だったかァ。」
『はい。桜柱の音白杏です。』
不死川からの問いかけに素直に答えてはいるが、いまだに笑顔ひとつ見せない杏。