第37章 祈り
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自分の血が特別なんだと気づいたのは鬼を狩り始めてすぐだ。
そもそも鬼にされた母が俺が出血した途端、動きが鈍くなった。
母を殺めた後はこの世の全てが急速に色を失い、擦り切れて褪せていった。
俺は夜の中を踠き回った。
鬼殺隊も日輪刀も存在すら知らず、山ほどの刃物で武装して 鬼と戦い、捕らえ、日の光で灼き殺す。
今思えばとんでもない自殺行為だが死ななかったのはこの血で鬼を酔わせられたおかげ。
運が良かっただけ。
同じ鬼を追っていて出会った鬼殺隊の粂野匡近が“育手”を紹介してくれたお陰。
でも俺は知ってる。
善良な人間から次々死んでいく。
この世の不条理を。
下弦ノ壱は匡近と2人で倒したのに柱になったのは俺だけだった。
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