第36章 兄の願い
時「ぐっ…!!」
宙に浮いた状態で柱へと突き立てられた時透は凄まじい激痛に顔を歪める。
黒「我が末裔よ…。あのお方にお前を鬼として使って戴こう。」
ただ己の末裔を途絶えさせたくなかったのか、時透の存在を惜しいと感じたのか、黒死牟そんな突拍子も無いことを言い出した。
時「己が細胞の末裔とは…思いの外しみじみと…感慨深きもの…。」
時「……。」
睨みつけている時透を気にしていないのか悠々と話し続ける黒死牟。
黒「そう…案ずる事はない…。腕ならば…鬼となったらまた生える…。まともに戦える上弦は最早私1人のみ…。あの御方も お前を…認めて下さるはず…。」
そう話す黒死牟は徐に時透の手当てを始めた。
黒「止血は…しておこう…。人間は脆い…。」
そんな事をぼそぼそ言いながら手当てする黒死牟から少し離れた背後。
この部屋へと辿り着いていた玄弥がそっと時透を助ける機会を伺っていた。
黒「しかし、仮に…失血死したとしても…あの御方に認められず死んだとしても…死とは即ち宿命…。故に…お前はそれまでの男だったと言うこと…。」