第36章 兄の願い
黒(独特の緩急。動きが読みづらい。撹乱も兼ねた技。実に良き技。流麗で美しい。無一郎が編み出した技なのだろう。)
そして、ここでやっと黒死牟が自身の刀に手を置いた。
黒「此方も抜かねば…無作法というもの…。」
そう呟いた刹那──…
ー 月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮 ー
上弦の壱が技を放った瞬間、
抵抗する間も無く時透の右手首が無くなり、斬られた箇所から血が噴き出す。
時(月の…呼吸…!?)
痛みと驚きで歯を食いしばる時透。
時(鬼となっても呼吸による剣技は使えるのか。)
止血するため、右腕を隊服の袖口の切れた部分をぐるぐる巻いていく。
時(異次元の速さだ。)
──ギュッ
そして隊服の先を口で咥えて引っ張り縛った。
それから時透は持久戦に持ち込まれないよう速攻を仕掛ける。
この対応には思わず黒死牟も唸った。
黒(素晴らしい……。腕を失って直ぐに止血。そこから更に攻撃をしようという気概。)
ー 霞の呼吸 肆ノ型 移流斬り ー
刃先が頸に近づいたとき…
黒死牟は素早く時透の日輪刀の鍔へ手をかける。
そして、そのまま時透の右肩の辺りを刺し、近くの柱へ突き立てた。