第36章 兄の願い
けれど、またもやふわりと避けられてしまった。
黒「無一郎…年の頃は十四あたりか…。その若さでそこまで練り上げられた剣技…私に怯みはしたもののそれを押さえ込み斬りかかる胆力。流石は我が末裔…血は随分薄くなっているであろうが…瑣末なこと…。たとえ名は途絶えようとも…私の細胞は増えて残っていた…。」
そんな事を言う黒死牟に対し、時透は淡々とした表情で言葉を返した。
時「おちょくってるのかな??もし仮に末裔だったとしても何百年も経ってたらお前の血も細胞も、俺の中にはひと欠片も残ってないよ。」
──ズズズズ
そう話す時透の頬に痣が浮き出る。
これには黒死牟も目を見張った。
黒(痣…そうか。出ていたのか…。)
ー 霞の呼吸 漆ノ型 朧 ー
ぶわっと辺りが霞む。
黒(初見の技だ。霞の呼吸の使い手はこのような技を使った事はない。)
数々の霞の呼吸の使い手を見てきた黒死牟は時透の編み出した技をじっ、と見つめる。
──ヒュッ
すると次の瞬間──…
時透の刀が黒死牟の頸元へと迫る。
素早くと回避するものの、黒死牟はその何とも言い難い独特の技を感心しながら観察する。