第35章 春の足音
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し「さて、カナヲ、伊之助くん。落ち着きましたか??」
先程まで3人とも嗚咽を漏らしながら泣いていたが、ここは鬼の本拠地。
柱であるしのぶが動き出す。
し「まずは治療をしましょう。できる範囲で止血をしてください。順番に処置します。」
しのぶからの指示通りカナヲも伊之助もそれぞれ自分の止血をし、しのぶからの処置を受ける。
し「君は出血が多いようですね。アオイの薬使いましょうか。」
伊「アオイの薬??」
し「えぇ。さぁ、腕を出してください。」
そう言いながら注射器に薬液を満たすしのぶ。
その注射器を見た伊之助はサァッ、と青褪める。
⚠︎大正時代の注射の針はとても太いです。そして、当然ながらめちゃくちゃ痛いそうです。
し「さぁ、伊之助くん??」
あからさまに嫌がり、腕を出さない伊之助にしのぶはにっこりと笑いながら伊之助の左腕を掴む。
伊「し、しのぶ…。」
まるで捨てられた仔犬のようにプルプルと震える伊之助。
カ「伊之助。これはね、アオイが作ってくれた薬なの。自分だって忙しいのに私たちのために頑張って作ってくれたの。」
伊「………。」