第35章 春の足音
カ「泣くと蹴飛ばされるの。踏まれるの。引き摺り回されて、水に浸けられるの。動きをよく見てないと“悪いところ”に当たって…次の朝には冷たくなっていた兄弟が何人もいた。ずっとそうしてきたから、泣かないようにしてきたから…急に泣けなかったの。ごめんなさい。ごめんなさい姉さっ、」
そこまで言い切ったカナヲをしのぶは思いきり抱きしめた。
し「ごめん、ごめんね、カナヲ。ごめんなさい。私、全然気づけてなかった。姉さん失格だね。もっと早く、あのとき聞けばよかった。」
しのぶに抱きしめられたカナヲはカナエの形見である蝶の髪飾りをさらに強く握りしめる。
カ「でも私、今度はちゃんと出来たよね??頑張ったよね??姉さんに言われた通り仲間を大切にしていたら助けてくれたよ。1人じゃ無理だったけど、仲間が来てくれた…。」
し「うん。うん。凄かったよ。カナヲにこんなに素敵な友人ができて私はすごく嬉しい。頑張ったよ。本当に……頑張ったね、カナヲ。」
そのしのぶの言葉にカナヲの瞳にブワッと涙が溜まる。
カ「しのぶ姉さんっ…。」
2人が互いをより強く抱きしめあったその瞬間──…