第35章 春の足音
し「あ、やっと死にました??良かった。」
凛とした声が真っ暗になった童磨の世界に響いてきた。
目を開くと自分の頸を片手に持ち、話しかけるあちこち傷だらけのボロボロな少女の姿。
ニコッと微笑む声の主、しのぶに童磨もやっと口を開いた。
童「…やぁ。しのぶちゃんだったかな??カナエちゃん??」
笑みを浮かべながら問いかける童磨をしのぶはキッパリ切り捨てた。
し「ああ、いいですよ覚えなくて。私のことも姉のことも。気色悪いので名前呼ばないでください。」
けれども、何の感情も感じない童磨は特に気にすることなくそのまま話を続ける。
童「凄かったね、あの毒の威力。回りきるまで全く気づかなかった…。」
し「まぁ、そうでしょうね。あれは鬼の珠世さんが協力して作って下さったものですから。」
そんなしのぶの言葉に童磨はキョトンとした。
童「珠世??へぇ、あの女が…。」
し「悔しかったですけどね、とても。出来ることなら自分の作った毒でお前を葬りたかった。だけど私は満足ですよ。結果万歳です。この怪我では私はもう最前線には立てないでしょうけどね。」
切なそうな表情を浮かべるもまたすぐに口を開く。