第35章 春の足音
童(そうだ。まだ分からない。諦めちゃいけない…。死なないかもしれない。無惨様みたいに。猗窩座殿も“なりかけていたんだ”。俺だってきっと…。)
──ゴトン
斬られた頸が地面へと落ちる。
そして、童磨の思いとは裏腹に再生するどころか体はボロボロと崩れ始めた。
童(うわー、体崩れ始めた。駄目なんだ、俺は…。“死ぬんだ。俺…”。)
童「………。」
童(あーー、やっぱり駄目だ。何も感じない…死ぬことが怖くもないし、負けたことが悔しくも感じない。ずっっとこうだったなぁ…俺は。)
そんな思いと交差するように甦る以前の記憶。
童(信者の女に次々手を出す色狂いの父をめった刺しにして殺した母が半狂乱になりながら服毒自殺した時も。部屋を汚さないで欲しいなぁ…とか、あの頃はまだ鬼じゃ無かったから 血の匂いが臭くて臭くて…。早く換気しなきゃ。とか、そんな事ばかり頭に浮かんで 悲しいとか寂しいとか、ほんの一瞬も感じなかった。20歳の時、鬼にして貰って100年以上生きたけど、結局人間の感情というものは俺にとって他人事の夢幻だったなぁ…。)