第35章 春の足音
し(…でも、私にできるのはここまで。私に頸を斬ることはできない。)
童磨を見下ろしながらそう心の中で呟き、カナヲと伊之助に向かって声をあげる。
し「カナヲ!!伊之助くん!!今のうちにこいつの頸を…!!」
カ「はい!!」
伊「よくわかんねぇけど任せろぉ!!」
しのぶの言葉に伊之助も日輪刀を振り上げて走り出す。
カ(分かってる。大丈夫。安心して。絶対斬るよ。私が絶対やり遂げる!!)
そんな強い想いがカナヲを動かす。
その強い想いは伊之助にも伝播していた。
2人は童磨の頸目掛けて日輪刀を振り下ろした。
伊「往生しやがれド腐れ野郎!!」
ー 血鬼術 霧氷・睡蓮菩薩 ー
──ドゴォッ
し「くっ、」
あとは頸を斬るだけだと思っていたカナヲたちの前に立ちはだかるように現れた巨大な菩薩像。
これにはカナヲも伊之助も大きく目を見開く。
童磨のすぐ近くにいたしのぶは、突然地面から現れた巨大な菩薩像により、遠くに吹き飛ばされる。
カ「しのぶ姉さん!!」
し「私は…大丈夫…。カナヲ、奴は…??」
しのぶの指示によりカナヲが童磨の位置を確認すると、菩薩像の手の上にいるのを見つける。