第35章 春の足音
カナヲが童磨を煽り倒していたとき、しのぶが杏の肩にそっ、と触れる。
『しのぶさん??』
杏は振り返り用件を聞こうとするが、しのぶは無言で懐から小さな瓶を取り出した。
そして、瓶の中に半分ほど入っている液体を杏の日輪刀の鞘に入れる。
『え??しのぶさん??』
突然のしのぶの謎の行動にポカン、となる。
し「これはもう1つの、私の奥の手です。」
『もう1つ…』
し「はい。私1人ではこの手は使えなかったですけど、3人でならきっとできます。」
力強い瞳でそう話すしのぶに杏は小さく頷く。
し「カナヲは今、私がこのことを杏さんに伝えるための時間稼ぎをしています。」
そう言ったしのぶは童磨と話しているカナヲに視線を送る。
カ「滑稽だね。馬鹿みたい。ふふっ。貴方何の為に生まれてきたの?」
そのとき丁度カナヲが見せた恐ろしいほどの笑みと言葉に杏としのぶは顔が引き攣った。
『……カナヲちゃん、あんな表情までできるようになっていたんですね…。』
し「私も驚いてます。」
2人とも若干引きつつも童磨の雰囲気が変わったことを察知し、しのぶは急いで作戦の全貌を話す。
し「──…以上が作戦です。よろしいですか??」
『えぇ。いきましょう。』
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