第35章 春の足音
し(あぁ…)
無様に床に這いつくばっている童磨の姿にしのぶは心の底からの笑みを浮かべる。
し「ふふふふふっ。本当に無様ですね。」
それはいつもの綺麗な笑顔ではなかったが、童磨は背筋にゾクリ、と悪寒が走った。
しかし、すぐに毒の分解を始める。
童(分解しろ。再生しろ。)
そんな童磨の意思とは裏腹に身体の崩壊は毒の効果によって止まらない。
──ピタッ
ついに体を維持できなくなってきた童磨。
血鬼術を操ることもままならなくなり、動かしていた氷の人形はピタリと動きを止めた。
そして──…
──パキンッ
ボロボロに砕け散った。
伊「!?」
これには攻撃に押されていた伊之助も思わず目を見開く。
伊「何だああ!?急に消えたぞ!!罠かァァ!!何かのぉぉ!」
困惑する伊之助にすかさずカナヲが理由を説明し始めた。
カ「違う!!しのぶ姉さんの毒が効き始めた!!」
──ダダダッ
カ「伊之助!!頸を狙って!!一気に追い込む!!」
カナヲはしのぶの目の前に倒れ込んでいる童磨に向かって走り出す。
カナヲはしのぶが生きる決断をした後に伝えてくれた作戦を思い出していた。