第35章 春の足音
しかし、そんな伊之助を人形の血鬼術が容赦なく襲う。
──バババッ
人形の血鬼術により腕の数ヶ所を斬られてしまい血が噴き出す。
そんな伊之助をカナヲは懸命に声を上げて宥める。
カ「伊之助、焦らないで!!落ち着いて、もう少しだけ!!あと少し粘って…!!」
童「??」
そんなカナヲの言葉にしのぶと闘っている童磨は小首を傾げる。
童(あと少し??)
しかし、カナヲの言葉の意味は気になったが、大したことでもないか、と考えることをすぐに止めた。
童(まぁいいか。御子が戦闘を記録するし…。この娘も大概ボロボロ。もういいか。)
目の前のしのぶの身体中の傷や激しい息切れした姿に童磨は再び吸収しようとしのぶに手を伸ばす。
カ「しのぶ姉さん!!」
その様子を横目に見ていたカナヲは慌てて叫ぶも、しのぶは童磨を睨みつけたまま動こうとしない。
伊「しのぶ!!」
カ「逃げて!!姉さん!!」
カナヲも伊之助も必死に叫び、助けに行こうとするが人形に阻まれてしまう。
童(若くて可愛い女の子。そして柱。久方ぶりのご馳走だなぁ。)
ニヤリ、と気持ちの悪い笑みを浮かべたまま、しのぶの身体に触れようとしたその瞬間──…