第35章 春の足音
そして、言葉の途中で何か思いついたような顔をし、二対の奥義を合わせる。
ー 血鬼術 結晶の御子 ー
氷の結晶がふわりと浮いて童磨によく似た小さな氷の人形が現れた。
童磨の血鬼術で生み出された小さな氷の人形。
手元から離れたその人形は、ストッと地面へ着地した。
それを見た伊之助はぴきぴきと青筋を浮かべたままその小さな人形を見て嘲笑う。
伊「ハハハ!なんだそのしょぼいチビ…」
ー 血鬼術 散り蓮華 ー
──ブワッ
油断した伊之助達に襲い来る大量の氷の花びらの攻撃。
伊「ぬアアア!?」
カ「…!!」
驚きながらも、慌てて日輪刀を振り直撃を躱す伊之助。
カナヲも後ろに立つしのぶを庇いつつ攻撃を押し返しながら、人形が放った技の威力に嫌な汗が頬を伝う。
カ(この威力…)
し「まさか本体と同じ威力の技を使う分身だなんて…本当に巫山戯てますね。」
嫌そうな顔をするしのぶに童磨は楽しげに声をかける。
童「そうそう!!よく分かったね!!この子俺と同じくらいの強さの技出せるんだ。というわけで後は任せるね。」
そう人形に言うと童磨は手をひらひら振りながら扉の方へと歩き出した。