第35章 春の足音
その姿に自分がしたこととほんの数刻前の杏からの告白を思い出した不死川はそっぽを向く。
不「そ、その…悪ィ…。」
そう呟くように言った不死川の頬が若干赤色に染まっており、それを見つけた杏は小さく微笑みながらゆっくりと口を開く。
『……仕方ないので、許してあげます。』
その言葉に不死川はまだ頬が赤いまま杏の方に視線を向ける。
不「っ!!」
その瞬間、杏は静かに不死川に近づくと先程不死川にされたのと同じように不死川の頬にそっ、と触れる。
『これでおあいこですね。』
ふふっ、と笑う杏に不死川は頬を更に赤く染めながらため息を吐く。
不「…そうだなァ。」
そんな不死川の様子に杏の中の悪戯心が顔を出し始めた。
『ふふっ、なかなかに気分がいいですね。』
人差し指で不死川の頬をツンツンして遊び出す杏。
そんな杏からの攻撃に対抗した不死川は杏の頭に手刀を落とす。
『うっ…、何するんですか不死川さん。痛いじゃないですか。』
杏は頭を触りながらジトッ、とした瞳で不死川を見上げる。
しかし、そんな杏の文句も気にせず不死川は立ち上がって歩き始める。