第35章 春の足音
『はい。しのぶさんとカナヲちゃんはカナエさん、伊之助くんはお母様を奴に殺されたそうです。だから、大丈夫です。きっと…私の分まで戦ってくれます。それに、しのぶさんの仕掛けもそろそろ効いてくる頃でしょうから。』
胸に手を当てて微笑む杏に不死川はフッ、と笑みを見せる。
不「そうかィ。…それはそうとお前な。何なんだァあの手紙はァ。」
『手紙…あぁ、あれですね。祈里さんと音羽さんのことありがとうございました。』
悪びれる様子の全くない杏に不死川は額に青筋を浮かべる。
不「ありがとうございました、じゃねえんだよ。なに俺に丸投げしてんだァ。ちゃんと面倒見ろ!!」
『仕方ないじゃないですか。鬼舞辻無惨が現れると分かっている場所にあの子たちを連れて行くなんてできませんよ。危ないです。』
不死川からのお説教の言葉に杏はさも当然とばかりに言い返す。
不「そもそも!!わかってたんなら俺にも教えろォ!!心配しただろうがァ!!」
『……すみません。』
不死川のお説教の中に自分を心配してくれていたことを感じ取り、杏は素直に謝る。
不「わかったならいい。ったく、あとで悲鳴嶼さんにも文句言っとかねぇとなァ。」