第35章 春の足音
杏もその隣に正座しながら申し訳なさそうに視線を下げながら事情を話す。
『上弦ノ弐のところからです。』
不「上弦ノ弐!?あんときのか!!殺ったのか!?」
『いえ…追い詰めてはいたのですけど、途中であの襖が現れて…。』
以前闘った"上弦ノ弐”という言葉に強く反応する不死川。
杏は小さく首を振りながらことの顛末を説明する。
不「そうかァ…。」
『でも、大丈夫です。』
小さくため息をつく不死川に杏は笑顔で言葉を続ける。
不「ぁ??」
『しのぶさんもカナヲちゃんも伊之助くんもいますから。必ず皆さんが仇をとってくれると信じています。』
不「胡蝶に胡蝶の継子にあの猪かァ。…微妙だなァ。」
不死川は杏があげた名前を復唱し、戦力を確認する。
渋い顔をしている不死川を気にすることなく杏は笑顔を浮かべる。
『すごい偶然なんですよ。なんと、みなさん童磨に大切な人を殺されているんです。』
不「は??…………胡蝶カナエかァ。」
不死川は肩を並べて闘っていたかつての仲間を思い浮かべる。