第35章 春の足音
落とされた杏はこれからどうしようかと考えを巡らせていた。
杏(さて、と…このまま落ちれば鬼たちの都合の良いところへ落とされるのは確実。十中八九、鬼舞辻無惨のところでしょうね。どこかで近くの襖を斬って違う場所に出ましょう。)
そう決めた杏は適当に場所を決めると、落下しながら日輪刀を構える。
ー 桜の呼吸 捌ノ型 桜狩り ー
襖を斬り込んだその勢いのまま部屋に転がり込む。
──が、
『ぇ……?』
転がり込んだ先はまさかの上下が反対だったのだ。
突然のことで受け身が間に合わず、痛みを覚悟した杏はぎゅっと目を瞑りそのまま床に落下する。
──ドンッ
『きゃっ!!あれ…いた………く、ない??』
覚悟していた痛みが一向にこないことを不思議に思っていると真下から低い声が聞こえてきた。
不「おィ、どけェ。」
『え??…不死川さん!?す、すみません!!』
見事に不死川の上に着地していた。
慌てて緩衝材代わりに使ってしまった不死川の上から降りる。
不死川は座り込んだままギロリ、と杏を睨みながら溜め息を吐く。
不「ったく、どっから降ってきたんだよォ。」