第34章 母の愛
──ガクン
『ぇ、』
し「あ!!」
杏が着地する瞬間、杏の足元に襖が出現した。
一瞬、驚きで呆けてしまうが、すぐに頭を切り替える。
杏(そう何度も同じ手を食うものですか…!!)
開いた襖の縁を掴もうとした瞬間、その襖の縁が消えてしまった。
杏(なっ…、糞鬼共め…っ、)
し「杏さん!!」
杏は驚きと怒りで青筋を立て、しのぶはサァ、と顔を青くし、杏の名前を叫ぶ。
杏(もうここには戻れない。仕方ない…。しのぶさん、カナヲちゃん、伊之助くん。)
怒りに支配されそうになった頭を再びすぐさま切り替える。
『私は大丈夫です!!』
杏(あとは任せます!!どうか私たちの姉の仇を…!!)
真っ青な顔をしたしのぶの瞳を杏は落下していきながらもまっすぐに見つめる。
し「っ、はい!!」
杏の意志を受け取ったしのぶは力強く頷く。
し「これを持っていってください!!頼まれてた玄弥くんのです!!アオイの薬も!!」
しのぶは袂から取り出した小瓶と杏の持ってきていた鞄から取り出した薬のいくつかをブンッ、と杏に投げる。
無事にキャッチできた杏はしのぶに向かって叫ぶ。