第34章 母の愛
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ハァハァと息を切らしながら暗い森の中を必死に走り抜ける琴葉。
琴「ごめんね伊之助、母さん馬鹿でごめんね。いつも失敗する、駄目な方に行ってしまう。」
腕の中に我が子をしっかりと抱きしめ、ひたすら謝りながら足を進める。
琴「ごめんね、ごめんね…。お母さんなのに、しっかりしなきゃいけないのに…。」
けれど琴葉が寺院から飛び出した時間帯は夜。
そして叫ぼうが喚こうが人ひとり居ない森の中。
山道に詳しくなかった琴葉は直ぐに自分の位置が分からなくなってしまった。
琴「どうしよう。道が分からない、迷ってしまった…。人里はどっちなの??どうしよう。ごめんね…ごめんね…。」
迫る脅威から何とか逃げようともがいてた琴葉は非情にも崖先へ辿り着いてしまった。
下は川が流れているが助かる見込みは殆どないだろう。
そして、森の中からは童磨が迫り来る音が聞こえてくる。
戻ることすらも叶わない。
琴「もう逃げ場がない。このままじゃ2人共殺されてしまう…。せめて伊之助だけでも……。」
愛しくて大切な我が子。
大きくなるまで守り抜きたかった、1人で守り抜くと決めた何より大切な我が子。
琴葉は大粒の涙をこぼしながら伊之助を抱きしめた。
琴「ごめんね伊之助。ごめんねぇ……。」