第34章 母の愛
その光景は見ていて非常に気分が悪い。吐きそうである。
童「うーん……んんーー??」
お目当てのものが見つかったのか指の動きが止まる。
童「あー!!これだこれだ!!15年前かな。わりと最近だね。」
とても懐かしそうに目を細めており、聞いてもいないのに勝手に昔話を始める。
童「17、8くらいの女の子が赤ん坊を抱いて来たなぁ。旦那が殴るんだって毎日。姑にも毎日いじめられて。俺が作った極楽教はそう言う可哀想な人を保護してあげていたからね。自分には親も兄弟もいなくて頼れる所も行く所もない。最初見た時顔が原型も分からないくらい腫れてた。酷いことするよねぇ。殴られたせいで片方失明したけど顔はね、手当てしたら元に戻ったよ。綺麗な子で印象に残ってる。同じ顔だよ、君と。もっと華奢だし柔らかな表情だけどこれ君のお母さんでしょ??うんうん!!間違いないぞ!!」
脳内を探り、思い出せたその記憶に童磨は満足そうに頷く。
けれど、納得のいかない伊之助は再び声を荒げた。
伊「俺に母親なんかいねぇ!!俺を育ててくれたのは猪だ!!関係ねぇ!!」
伊之助の言葉には流石の童磨も苦笑いを浮かべる。
童「君は猪から産まれたの??人間なんだから人間から生まれているでしょう。」