第34章 母の愛
離れた場所に着地した童磨は杏に声をかけ、被り物をしげしげと見ていた。
突然、自分たちから離れた杏のことも、杏としのぶと童磨の会話も理解できなかったカナヲは小さく呟く。
カ「桜柱さまはなんであんな遠くに…。」
し「今、奴は伊之助くんの被り物と同時に杏さんも捕まえようとしていたのです。」
カ「そ、そうなんですね。」
カ(全然見えなかった…。あいつの動きが目で追えない。)
自慢の視力が童磨に通じていないのかもとカナヲの額には冷や汗が流れ落ちる。
童「んー、かなり年季が入ってるねこの猪の皮。目はどういう加工をしてるの??」
伊「……テメェ返しやがれ。」
伊之助は杏のことは見えていないのか額に青筋を立てながら、自分の被り物を取った童磨の方へと向き睨みつける。
猪の被り物は伊之助の育ての親である猪の頭。
育ての母の形見を奪われ、伊之助が平静を保てるわけがない。
しかし、そんな伊之助の怒りを感じていない童磨は伊之助の素顔を見るなりニヤリと笑う。
童「あれー??なんか見覚えがあるぞぉ君の顔。僕達何処かで会ったよね??」
伊「テメェみたいな蛆虫と会った覚えはねぇ!!汚ねぇ手で俺の毛皮に触れるな!!」