第34章 母の愛
伊之助が怪我をしてくるたびに厳しく叱り、優しく手当してくれていたしのぶ。
いつもひらひらと蝶のように舞い、傷一つ付いているのを見たことのないカナヲ。
そんな2人のボロボロな姿に伊之助は日輪刀をブンブンと振り回す。
し「えぇ。大丈夫ですよ、伊之助くん。血液は十分に足りてますから。」
伊「そ、そうなのか…??お、お前は…??」
カ「私も…大丈夫。しのぶ姉さんに比べたら全然軽症だから。」
伊「ほんとか…??」
し「本当ですよ。…助けに来てくれてありがとう、伊之助くん。」
弱々しく微笑むしのぶの表情、身体中の傷を見て伊之助は一瞬俯いたあと童磨を鋭く睨みつけた。
伊「咬み殺してやる。塵が。」
──ドンッ
そう、低く呟いた伊之助は突っ込んでいく。
カ「そいつが撒き散らす冷気を吸わないで!!」
『肺が凍って呼吸が使えなくなりますから!!』
カナヲは慌てて叫び、杏も童磨に向かって駆け出す。
ー 獣の呼吸 肆ノ牙 切細裂き ー
伊之助は自身の2つの日輪刀を童磨に振り下ろす。
童磨は伊之助の攻撃を軽くいなしながら楽しそうに笑う。