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【黒子のバスケ】帝光の天使(中学校編)

第7章 ー天使の古巣ー


来校証を返却し、待たせていた車に乗り込む。
流れ行く車窓の風景を眺めながら、窓辺についた肘で口元に当てた拳を支える。
実際嘔吐するかどうかは別として、吐き気に似たひどい感覚に襲われていた。


それは久遠の過去に。

天使のような久遠に向けられた悪意の牙に。
久遠が受けた仕打ちに。
久遠に手を差し伸べなかった全ての者に。
久遠が負った傷に。
久遠が失った全てに。


それは久遠という人間に。

どこまでも優しすぎるその性格に。
全てを受け入れるその性質に。
どんなに傷つけられても微笑むその精神に。
本当のところが見えないその心に。


そして、

久遠がそのような人間でなければ、
久遠にそのような悲惨な事が起こらなければ、

赤司は久遠と再会することなどなかった。

赤司の心を一番深く抉るのは、今久遠と一緒にいられるこの現状はそれら全ての上でしか成立しなかったという事実。

自分は久遠の不幸の恩恵を受けているに過ぎないという現実。


久遠との再会を喜ぶ自分と久遠の過去を許せない自分のアンビバレント。
それがこの不快感の原因であった。


(そんなのわかっている。切り替えろ。過去は過去だ)


深みにはまりそうになる自分を引き上げる。


(今後、天野が傷つくことがないようにすればいい)


過去を見るより久遠の今と未来を考えた方が万倍も建設的だ。


(俺に何ができる?彼女が傷つかない未来のために、俺には何が…)


いつだってどんな問いにでも最適解を導き出せる赤司だったが、この問いにだけはすぐに答えは浮かばなかった。
ただ気持ちだけが急く。
口元に当てた拳を爪が白むほど、肉に食い込むほど握りしめ、何の罪もない風景を睨みつけていた。
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