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【黒子のバスケ】帝光の天使(中学校編)

第2章 ー記憶の中の天使ー


「そうか。なんだか申し訳なかったね、そんなことを訊いてしまって」

多少の動揺はあったが、赤司はそれを悟られないように言葉を紡ぐ。

「そんなことないよー?秘密じゃないし、ただパパとかママが気にしちゃうからそうしてるだけなんだー。だから赤司くんは気にしないで大丈夫だよー」

胸の前で両手を広げてひらひら振っている彼女はやはり笑顔だ。

赤司は自己紹介もまだしていないのに『赤司くん』と呼ばれたことが些か引っかかった。
自分も今まで忘れていたほどの古い記憶。
ましてや、幼い頃の記憶など霞がかっていて朧気な夢のようなものである。
10年前にたった1回、名前を言い合っただけの自分を彼女は覚えているのだろうか?
それはもう嬉しさとか驚きなどではなく、戸惑いでしかない。
赤司は少しだけ眉に力が入るのを感じた。
だが、もしかすると校内で自分を知る機会があったという可能性もあり得る。
自分はそこそこ名前が知れているという自負もないわけでもない。
とりあえず、確かめてみることとする。

「どうしてオレの名前を?」

「んー、とね…クラスが隣なんだー。隣のクラスとは体育が一緒でしょ?赤司くん、何をやっても上手だからすごく目立ってるよー」

やはり、校内で見かけただけか。
それなら合点がいく。
心無しかがっかりしている自分がいることに、赤司は心の中で苦笑した。
まさか相手にも覚えていて欲しかったと期待していたとは。
これ以上このことを話しても得るものはなさそうなので話題を変えた。

「サッカーを見ながらノートに何か書いていたみたいだけど、サッカーが好きなのかな?」

赤司は彼女が抱えるノートに目をやる。
真新しい大学ノートの表紙にはNo.5と書かれている。
内容はきっと今度こそ彼女の秘密に違いない。

「んーん、サッカーはやったことないんだー。これはね…」

やはりニコニコしながら秘密を教えてくれる彼女の名前を訊ねたのは予令が鳴ってからだった。

彼女の名前は橘律。

1週間後、赤司は自らが副部長を務める男子バスケ部のマネージャーとして彼女を迎い入れていた。

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