第4章 わっしょい
心底残念そうに言う三人に杏寿郎もまた残念そうな顔をしたが、風呂敷からもう一つ芋けんぴの大袋をガサガサと取り出して、一番近くにいたきよに手渡した。
「では、仕事が終わったら皆で食べるといい!」
「ついでにこれもなァ」
杏寿郎が差し出した芋けんぴと一緒に、不死川のかりんとうも手渡され、なほ、きよ、すみは、ぴったり揃った可愛らしい声で「ありがとうございますっ」と言うと、満面の笑みで廊下の先へと駆けて行ったのだった。
「煉獄さん、不死川さん、いつも本当にありがとうございます」
咲からもお礼を言うと、二人共「大したことじゃない」といった感じで微笑むのだった。
実を言うと、なほ、きよ、すみ、の三人は、当初は杏寿郎と不死川のことを少し怖がっていた。
女性ばかりの蝶屋敷で、怪我人として大柄な男性隊士が来ることはあっても、あのように怪我もしていない元気な男性隊士とはあまり接したことが無かったので、単純にその迫力に圧倒されていたのだ。
ただでさえ不死川はあの風貌であるので、幼い少女達からしたら怖さの塊に見えなくもない。
だが意外なことに、少女達に向けられる不死川の表情は、普段の常軌を逸した印象からは一転してとても柔らかいものだった。
それは咲に対しても同じことで、咲も最初は不死川の事を怖いと感じたが、あの優しげな笑顔を見た瞬間に、そんな恐れも吹き飛んでしまった。