第4章 わっしょい
鬼の襲撃から数ヵ月後、咲の足の傷は随分と癒えて、今では松葉杖をつきながら蝶屋敷の敷地内であればぐるりと回れるほどまでに回復していた。
体力回復のために日課にしている散歩で咲が蝶屋敷の庭を歩いていると、後ろから大きな声で名前を呼ばれた。
「咲!」
振り返るとそこには杏寿郎と不死川の姿があり、ニコニコと微笑んでいた。
「あっ、煉獄さん、不死川さん!」
咲はパッと笑顔を浮かべて、松葉杖を上手く使って方向転換すると、二人のもとへと歩いて行った。
「随分と上達したようだな!咲の努力の賜物だ!」
「あァ、中々できることじゃねェ。よく頑張ったな咲」
二人から褒められて、咲は少し照れたように笑う。
座敷で対面したあの日の後も、二人は暇を見つけてはよくこうやってお見舞いに来てくれていた。
そしてその度に、何かしらのお菓子を持ってきてくれるのだった。
いつも同じものという訳ではないのだが、杏寿郎はさつまいも、不死川はおはぎであることが多い。
今日も二人はお菓子を持ってきてくれていて、杏寿郎は芋けんぴ、不死川はかりんとうの入った大袋を、ぶら下げていた風呂敷から取り出して見せたのだった。