第4章 わっしょい
「咲、俺達は君に謝らねばならぬことがある」
そう言って、杏寿郎と不死川の表情がスッと真剣なものへと変わった。
もともとしていた正座が、さらに正される。
「君達一家を襲った鬼を、取り逃がしてしまった。言い訳するつもりはない。俺達の力が及ばなかったせいだ。本当に申し訳ない」
深々と下げられた二つの頭に、咲の方が逆に恐縮してしまった。
「そんな、とんでもありません!!命を救っていただいただけで、十分感謝しております。どうか頭を上げてください!!」
咲は慌てて二人にいざり寄ろうとしたので、また体のバランスを崩してしまった。
「あっ」
バタンと畳に倒れ込んだ咲に驚いて、杏寿郎と不死川は慌てて頭を上げると咲の体を助け起こした。
杏寿郎の胸にすがりつくような形になりながらも、咲は二人の顔を見上げて言った。
「お二人が来てくださらなければ……私の命もありませんでした。本当に、ありがとうございました」
大きな瞳に涙を浮かべながら言う咲の顔を見下ろして、杏寿郎と不死川の唇が震える。
「…っ!約束しよう!俺達は必ず、その鬼を見つけて殺す。必ず君の家族の仇は打つ!!」
杏寿郎のその言葉に、不死川も大きく頷いて言った。
「必ず、果たしてみせる」
その二人の顔を見た咲は、何故だか分からないが涙がどんどん両目に盛り上がってきて、気がついたら声を上げて泣いていたのだった。
杏寿郎の胸にすがりつきながら泣く咲の頭を、横に膝をついた不死川が何度も何度も優しく撫でてやる。
そんな三人の姿を傍らで見つめながら、しのぶもまた静かに涙を流したのだった。