第4章 わっしょい
倒れ込みそうになった咲の体を、慌てて杏寿郎と不死川が支える。
「無理をするな、咲!」
「そうだァ。起き上がれてるだけでも十分上等なんだ」
そう呼びかけられた時、咲はまたもやハッとした。
「あっ、申し遅れました。私は、兎田谷蔵 咲と申します」
そう言って、今度は体のバランスを崩さない程度に頭を下げる。
「うむ!俺は煉獄杏寿郎だ!」
「俺は不死川実弥だァ。ところで咲」
不死川がふいに自身の名前を呼んで真っ直ぐに見つめてきたので、咲は少しビクリとする。
ちょっと怖かったのだ。
「その”様”ってのはやめろォ。不死川でいい」
「……っ、はい。あの……では、不死川さん…?」
「よォし、いい子だァ」
ふわっと頭に大きな手が乗せられるのを感じて、驚いて咲は顔を上げる。
だが、その視線の先にあった顔にもっと驚かされた。
誰彼構わず噛み付きそうに見えていた不死川の傷だらけの顔に、本当に優しそうな笑顔が浮かんでいたからだ。
笑うと全く顔の印象が変わってしまう。
まるで別人だ。
「むう!では俺のことも”様”無しで頼む!」
「は、はい。……煉獄さん」
「うむ!!どうした咲!!」
いや、どうしたと言われても、と咲は思わず心の中で突っ込んでしまったが、全く頓着していない様子の杏寿郎は、すでに次の話題に移ろうとしていた。