第4章 わっしょい
一方の煉獄さんは、と目を向ける。
こちらはまるで全身が燃え盛る炎のような印象を与える人で、長く伸びた金色の髪は見事に輝き、その毛先は燃えるような真紅に染まっていた。
肩に引っ掛けるようにしてかけられた特徴的な羽織も、燃える炎のような柄だった。
赤くて大きな瞳に、意志の強そうなキリリと上がった太い眉毛。
だがその口元には優しげな笑みが浮かんでいるので、どことなく太陽のような印象を受けるのだった。
(煉獄さんとは何度も間近で触れ合っているはずだけど、こうやって全体をしっかりと見たのは初めてだな)
そんなことを思っていた咲に、明るい口調で杏寿郎が声をかけた。
「やぁ、随分と良くなったようだな」
しのぶとは反対側の布団の脇に正座して杏寿郎が言う。
あまりにも気さくに話しかけられて、そう言えば言葉を交わすのも初めてだったと咲は気がつき、緊張しながらも慌てて口を開いた。
「はい。煉獄様、不死川様、命を救っていただき本当にありがとうございました」
咲は布団から出て、居住まいを正そうとした。
だが、右足が無いことで体のバランスが取れず、切断された痛みのせいでまだ正座することも出来なかった。