第4章 わっしょい
「ありがとうございます、煉獄さん。助かりました」
「うむ……。彼女はいつ目覚めたのだ」
「つい、今しがた。目覚めてすぐに、ご自分の足を失ったことに気づいてショックを受けてしまい……」
「……当然のことだろう。……あまりにも辛すぎる」
杏寿郎は自身の腕の中で気を失っている咲の、涙で濡れた頬を見下ろして悲しげに眉を下げた。
「どうやら、彼女と話せるようになるには、まだしばらく時間がかかりそうだな。また来る」
「はい。何度もありがとうございます」
「なんの!当然のことだ!それより胡蝶、これまで通り、彼女の容態については逐一鴉で教えてくれ」
「承知しました」
部屋を訪れた時と同じように炎のような羽織をはためかせて退室しようとする煉獄に、しのぶは思い出したように言った。
「そうそう、煉獄さん。お見舞いの品は、咲さんのために有効に使わせていただいていますよ。ただ、量が多すぎるようなので、もう少し減らしていただいた方がよろしいかと思います」
しのぶが指摘したのは、杏寿郎が咲の見舞いに来るたびに持ってくる大量の食材やら花のことだった。
咲がこの蝶屋敷に運び込まれてからというもの、杏寿郎は任務の合間を見ては頻繁に見舞いに訪れてくれているのだが、その度に大量の見舞い品を持ってくるので、さすがに蝶屋敷の方でも持て余していたのだ。
「むう!そうか!善処するっ!」
果たして本当に分かったのかどうか、勢いよく頷いた杏寿郎の猫のような目を見ながらしのぶは苦笑したのだった。