第4章 わっしょい
その時、スラリとふすまが開き、燃え盛る炎のような羽織を肩にかけた男が入ってきた。
「煉獄さん!」
突然の来訪者に、咲の体を必死で押さえながらしのぶが叫ぶ。
来訪者は、あの夜の現場に駆けつけた者の一人、煉獄杏寿郎だった。
杏寿郎は一瞬で場の状況を理解すると、羽織をはためかせながら足早に近づいていき、暴れる咲の体をぎゅうっと抱きしめた。
「落ち着け、落ち着くんだ」
咲の薄くて小さな体を杏寿郎の大きな体が包み込み、その動きを封じた。
がっちりとした腕に動きを阻まれたことにより、咲は少しだけ冷静さを取り戻す。
頬に感じる厚い胸板の感触、体に回されたがっしりとした腕。
そして、凛と通ったこの声。
私はこれらを知っている……。
あぁ……、不思議と、体から力が抜けていく……。
安心……する……。
ふうっ、と意識を失い、杏寿郎の腕の中でぐにゃりと脱力した咲の姿を見て、しのぶはホッと安堵のため息をついたのだった。