第4章 わっしょい
その体を、しのぶが抱き止めてくれる。
「無理は禁物ですよ、咲さん。貴女は酷い熱を出していたのですから。それに、ひと月以上寝たきりになっていたので、体力も相当落ちているはずです」
咲の体を支えてくれている手に少女達の手も加わり、咲は何とか姿勢を元に戻すことができた。
自分がひと月以上寝たきりになっていたと聞き驚いたが、確かに自分でもげっそりと体が衰えているのを感じた。
だが今体勢を崩した時、何か、もっと違う違和感があったような気がした。
寝たきりによる体力低下だけではない、何というか体のバランスが上手く取れないような…。
そこまで考えた時、咲はハッと唐突に思い出した。
鬼に逆さ吊りにされ、右足に激しい痛みを感じたことを。
そう意識した途端に、右足がズンとひどく重くなったような気がした。
それは重いようにも感じられたし、鈍い痛みのようにも感じられた。
とっさに咲は、かけていた布団を剥いで右足を確認しようとした。
だが、浴衣の裾から伸びていたのは……、一本の足だけだった。
「え……?」
一瞬、何を見ているのか理解できなくて、咲は言葉を失った。
それから、恐る恐る浴衣の裾をめくってみると……、そこには、包帯でぐるぐる巻きにされた膝小僧があったが、その下にあるはずのふくらはぎも足首も、五本の指も無かった。
右膝の下には、何も無かった。