第4章 わっしょい
そしてすぐ後ろの暗闇の中から、グチュグチュという音と共に「コイツも違うなぁ」という声が聞こえてきた。
「と言うことは、マレチはお前かぁあ~」
ぬう、と暗闇から異形の者が顔を出して、血で真っ赤に染まった腕を咲へと伸ばした。
「…うっ、あ、あぁ…あっ……」
咲は震えの収まらない体を奮い立たせて、必死で駆け出した。
両目から、まるで泉から湧き出るようにして次から次へと涙がこぼれ落ちていく。
霞む視界の中で、咲は無我夢中で走った。
だが、自分よりも圧倒的に足も早く力も強いはずの兄達をあっけなく殺してしまうような化物から、幼い少女が逃げ切れるはずもなかった。
咲はあっという間につかまり、残酷にも右足を齧り取られてしまったのだった。
そんな絶体絶命の時に現れたのが、杏寿郎と不死川だった。