第4章 わっしょい
「あれ?でもそう言えば、おじさまはどちらに……?」
先ほど玄関先で言葉を交わした後、庭に移動する途中で槇寿郎の姿がいつの間にか消えていたことに気付いた咲は、キョロキョロと辺りを見回す。
「そう言えばそうだな。父上はいずこへ……」
杏寿郎も不思議そうに辺りを見回した時、家の裏の方から槇寿郎が大きなカゴを背負って現れた。
「畑からたくさん掘ってきたぞ!さぁ咲、じゃんじゃん食え!」
大きな声で言う槇寿郎の額には大粒の汗が浮かび、陽の光に照らされてキラキラと輝いていた。
まるで少年のような笑顔を浮かべた槇寿郎の背負ったカゴには、今にも溢れ出してしまいそうなほど大量のさつまいもが入れられている。
「はっはっはっ!これはまたすごい量ですな父上!!どんどん焼きましょう!」
杏寿郎は全く動じる様子もなく、愉快そうに笑っている。
さすがは煉獄家の長男である。
だがそんな二人を見て、煉獄家にあって唯一一般人の感覚を持っている千寿郎が慌てて言った。
「父上、兄上!さすがにそんなに咲さんも食べられませんよ!」
この場で一番年若い千寿郎に至極まっとうな事を言われてしまい、槇寿郎と杏寿郎はシュンとした。