第4章 わっしょい
「咲、たまには家に寄っていくといい。父上も千寿郎も君に会いたがっている」
そう言われて、咲は槇寿郎と千寿郎の顔を思い浮かべる。
杏寿郎にニコリと微笑まれて、咲はつい頷きそうになってしまったが、まだいくつか届け物が残っていることを思い出した。
「私もお会いしたいのは山々なのですが、届け物がいくつかありまして……」
「むう!そうか……」
シュン、となった杏寿郎に咲の心もシュンとなる。
そんな時、傍らにいた先輩隠の後藤が言った。
「俺が代わりに届けといてやるよ。どうせ帰り道の途中だし」
ぐっ、と立てられた親指に、咲は慌てて手を振った。
「え!そんな、後藤さんも任務続きで疲れてるでしょうし……」
「だーいじょうぶだよ!先輩ナメんなよ」
眉を下げる咲に対して、後藤はバチコーンと大げさにウインクしてみせた。
後藤は、咲が隠になった時から指導してくれている先輩であり、言わば隠の師匠のような存在だ。
独り立ちできるようになってからも、何くれとなく世話を焼いてくれる。