第3章 おはぎと抹茶
炭治郎の顔が頭に浮かんできたので、それをかき消すようにして不死川は咲に話しかけた。
「最近の調子はどうだァ?なんか困ってることとかねェか?」
「困ってることはありません。大丈夫です!でも、最近配置替えがありまして、担当隊士さんが少し変わったんです」
「ほォ、冨岡は担当から外れたかァ?」
「いえ、柱の方々は引き続き担当です」
「……チッ」
不死川がこれみよがしに舌打ちをすると、咲は苦笑いした。
不死川が水柱・冨岡義勇のことを嫌っていることは以前から知っている。
何しろ顔を合わせれば、不死川は狂犬のように噛み付いていくし、一方の冨岡はと言うとボーッと心ここにあらずといった様子で全く頓着していない。
おそらくタイプ的に馬が合わないのだろう。
「竈門炭治郎さん、我妻善逸さん、嘴平伊之助さん、という方々の担当に新しくなりました」
「アァ!?竈門ォ!!?」
兄のような笑顔が一転して、いつも鬼殺隊で見せているような血走った表情に変わった。
「あんなデコッぱち野郎の担当なんかしてやる必要ねェ。別の隠に代わってもらいなァ!」
「えっ、ちょ、ちょっと待ってください不死川さん!」
咲は慌てて、空になった不死川の皿にもう一つおはぎを乗せながら言った。
それで気がそれるかと思ったのだが、あまり効果はなかった。