第3章 おはぎと抹茶
おはぎ同様に抹茶も好きなようで、用意したおはぎと抹茶をお盆に乗せて運ぶ不死川は、どことなく嬉しそうだった。
茶の間として使っている、他の部屋に比べたらこじんまりとした座敷で、不死川にすすめられた座布団に腰を下ろすと、蝶屋敷から不死川邸までの道のりの疲れがホッと消えていくような気がした。
「不死川さん、いただきます」
「あァ、ゆっくり食うんだぞォ」
まるで幼い妹にでも言うかのように、不死川は先ほど見せたような穏やかな笑顔を浮かべて言った。
こんな笑顔、おそらく隊士の中で見た者はほとんどいないであろう。
いやむしろ咲にしか向けられたことはないかもしれない。
それほどに穏やかで優しげな、普段の不死川からは想像もつかないような笑顔なのだ。
いつも目を血走らせて好戦的な言動を繰り返している不死川が、こんな表情を浮かべることが出来るなどとは、よもや誰も思うまい。