第3章 おはぎと抹茶
普段は血走った目をして、暴力の化身のような言動をしている不死川が何故このような柔和な態度を取るのか。
それはその昔、鬼に襲われている彼女を杏寿郎と共に助けたのが不死川だったからだ。
片足を失いながらも隠となって鬼殺に尽力している彼女のことを、不死川はずっと気にかけてきた。
不死川には部屋で待っていろと言われたのだが、隠である自分が柱にお茶を淹れさせる訳にはいかないと言って、咲が台所で湯を沸かしていると、あっという間に着替えを終えた不死川が戻ってきた。
「咲、腹減ってねェかァ?おはぎあるぞ、食ってけェ」
そう言って不死川はいそいそと戸棚からおはぎを取り出してきた。
本人が恥ずかしがるので咲は面と向かって指摘したことはないのだが、不死川はおはぎが大好きだ。
咲がこうやって家を訪れた時には必ずおはぎをご馳走してくれるし、時々それにかりんとうなども加えられることがある。
甘いものが好きなのかもしれない。