第3章 おはぎと抹茶
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「それでは、炭治郎さん、善逸さん、伊之助さん」
蝶屋敷の門の前に立ち、咲はくるりと三人を振り返った。
その顔には隠の顔布が当てられ、小さな顔のほとんどを覆ってしまっている。
対する三人の腰元にも刀が差され、すっかり旅支度が整っていた。
この数日間、炭治郎達には鴉からの伝令が無かったのでそのまま蝶屋敷で待機していたのだが、咲の義足が直ったのと同じタイミングで、やっと鴉からの指示が出たのだった。
「私は皆さんの担当隠なので、何かありましたらご連絡ください。どうぞお気をつけて」
「うん!咲も気をつけてね」
笑顔を浮かべる炭治郎に、咲もニコリと目元を細めて笑顔を返す。
「うええーん、咲ちゃんと別れるの寂しいよ~!困った時は連絡ちょうだいね?すぐ飛んでいくから!」
「お前は鳥じゃねぇんだから飛べねぇだろ」
「物理的に飛ぶって意味じゃねぇーよ!!急いで行くってことだよ!!」
「コラ!二人共やめないか!」
炭治郎に首根っこを掴まれた伊之助は、ギーギーと獣のような鳴き声を立てる。
「では」
咲は三人に軽く手を上げてから歩き始めた。
またな~!と後ろから炭治郎の明るい声が聞こえたので、咲は再度振り返って手を振ったのだった。