第22章 番外編 其の参
その手に引かれるようにして、靑寿郎はやや照れくさそうな顔をしながらも咲のすぐ目の前に正座した。
「靑寿郎、あなたにも心から愛せる人が見つかったこと、母はこの上なく嬉しく思います。結婚したら、奥さんのことを一番に褒めてあげるのですよ」
ふわりと藤の花の甘い香りが鼻をくすぐり、咲の白い手が頭に置かれるのを靑寿郎は感じた。
「父上様がこの母にそうしてくださったように、貴方にもそうしてもらえたら、母はとても嬉しいです」
そう言って、幼い頃によくやってもらったように何度も何度も頭を撫でられて、靑寿郎は気恥ずかしくもあったがそれ以上に嬉しかった。
「はい!!母上!!靑寿郎、そのお言葉しかと胸に刻みます!!」
力強い返事に、咲が靑寿郎を抱きしめる。
「ありがとう靑寿郎。結婚、本当におめでとうございます」
咲の優しい腕に包まれて、靑寿郎は幸福な気持ちでホワホワと目を閉じた。
その靑寿郎の後ろには、いつの間にか杏寿郎がムンとした顔をして正座している。
どうやら咲に抱きしめてもらう順番待ちをしているらしかった。
そんな杏寿郎の姿を見て咲は、
「あらあら…困った杏寿郎さんですね」
と苦笑いしたのだった。