• テキストサイズ

【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第22章  番外編 其の参



真寿郎の祝言も無事に済み、ちょうど非番であった桜寿郎が本宅に遊びに来ている時であった。

「兄上、いらしていたのですか!」

杏寿郎と桜寿郎が並んで庭先に出ている姿を見て、靑寿郎が縁側から声をかけた。

「うむ。靑寿郎はこれから任務か?随分と早く出立するのだな」

「はい。今回の任務は少し遠方なのです。ですが、遂行にはそれほど日はかからないと思われます」

「そうか。だが十分に気をつけてな」

「はっ。では父上、兄上、行ってまいります」

杏寿郎と同じように結われた頭をペコリと下げて、靑寿郎は廊下の先へと消えて行った。

その後ろ姿を見送ってから、チラリと杏寿郎は桜寿郎に視線を向けた。

「ときに桜寿郎よ、靑寿郎は、その…、好いた女性などはおらんのか?」

珍しく口ごもるような口調で話す父親の姿に、桜寿郎はぱちくりと目を見開き、それから眉を下げてニコッと笑った。

「ははっ、父上、ご心配には及びませんよ!靑寿郎も男です。しっかりと考えておるはずです」

「なに、そうか!!それは重畳重畳!!」

桜寿郎の言葉に、杏寿郎は胸の前で組んだ腕を揺らすようにして笑った。

杏寿郎の心配ごと。

それは今年30歳になる末っ子から、一向に結婚の話が出ないことであった。

すでに先日、杏寿郎にとっては孫である真寿郎が結婚している。

10歳も年上の靑寿郎は、とっくに結婚していてもおかしくない年齢に達しているというのに、結婚どころかいまだかつて女性との噂すら聞いたことがなかった。

靑寿郎は咲に面立ちがよく似て、惚れ惚れするような美青年へと成長している。

決して女性からモテない訳ではないと思うのだが…と杏寿郎は以前から首をひねっていた。

結婚は誰に強制される訳でもなく己の気持ちで決めるものだと分かってはいるが、やはり杏寿郎も父親としてどうしても気になってしまうのだった。

/ 525ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp