第22章 番外編 其の参
ちなみに詩織の容姿だが、煉獄家の子ということで母親はしきたり通り観篝をしていたが、女児であったため髪の毛は焔色には染まらなかった。
詩織の髪は母親譲りの美しい黒髪である。
ただしその瞳の色は、父親の千寿郎やその他の煉獄家の男達と同様に燃えるような赤色だった。
そして母親達の目も、妊娠中、何十回にも渡り大篝火を観るため次第にうっすらと赤くなる。
だから子どもを三人生んだ咲にいたっては、黒曜石のようだった黒い瞳が今では炭治郎と同じような赫灼色に染まっていた。
その瞳を以前、杏寿郎がまじまじと覗き込んで言ったことがある。
「俺は咲の黒い瞳をいっとう美しいと思っていたから、それが見られなくなってしまったのは少し恋しいな」
その口調がまるですねた幼い子どものようだったので、咲もまた孫達をなだめるような口調で、
「私は、杏寿郎さん達の綺麗な瞳に近づけたようで嬉しいですよ」
と言ってやった。
すると杏寿郎はたまらなくなったような顔をして、そのまま顔を近づけてくると、ちゅっと軽く咲のまぶたに口づけをしたのだった。