第3章 おはぎと抹茶
アオイは黙ったまま、そっと作業をし始めた。
先ほどのように歩行中に義足がズレてしまうことのないように包帯でしっかりと固定していく。
しかし少しでも足と義足の接触面の負担が軽くなるようにと、細心の注意を払いながら。
この時ばかりは、今まで何十回何百回と包帯を巻いてきたことで上達した己の技術に感謝した。
包帯を巻きながら、アオイはじわじわと目の奥が痛くなってくるのを感じていた。
これほどの怪我だ。
傷の断面を見ても、スパッと切れてしまった訳ではないことが分かる。
歪なその傷跡。
そう、まるでゆっくりと千切られたかのような。
さぞや痛かったことだろう……苦しかったことだろう……。
「はい、終わりましたよ」
包帯で固定した上に脚絆を取り付けてやり、処置は完了した。
「ありがとうございます」
ニコッと幼い笑顔を向けられて、その可愛らしさにアオイは浮かびかけていた涙に気づかれないように、必死で瞬きをしてそれを飛ばした。